コンピュータはクワガタの種類をどこまで判定できるのか?
写真などの画像を認識して昆虫の種類を判定してくれるアプリ「昆虫判定機」があることを知りました。
画像認識といえば、最近は「機械学習」や「AI」などのキーワードとともに、技術が発展しているとのニュースをよく目にします。
昆虫の種類を判定するソフトに機械学習やAIがどの程度関わっているか分かりませんが、同じ画像認識だけにどれだけできるのか興味がありました。
そこで、他の画像認識ソフトと一緒に、コンピュータがどれぐらい正確にクワガタの種類を見分けられるかテストしてみました。
使ったのは以下に紹介する3種類のソフトで、いずれも写真をアップロードするとすぐに答えが返ってきます。したがって、「中の人」が判断しているわけではなく、ソフトが自動的に判断しているということで3者は共通しています。
テスト 1(基本編)
まずは最も簡単そうなものから試します。図鑑に載っている昆虫の姿も、この真上からの視点ですね。
1-1. ノコギリクワガタ(オス)、上から
昆虫判定機の答え:ノコギリクワガタ
1-2. カブトムシ(オス)、上から
昆虫判定機の答え:カブトムシ
1-3. ヨーロッパミヤマクワガタ(オス)、上から
iNaturalistの答え:カプレオルスミヤマクワガタ
昆虫判定機の答え:ノコギリクワガタ
1-4. ギラファノコギリクワガタ(オス)、上から
iNaturalistの答え:ヨーロッパミヤマクワガタ
Google imagesは、種までの判定はまだちょっと厳しいのかもしれません。iNaturalistはGoogle imagesよりは踏み込みましたが、やはり正解にはいたらず。おしいです。日本の昆虫が対象の昆虫判定機は、ノコギリクワガタとカブトムシを正確に見分けました。しかし外国のクワガタは対象外とあって、無理がありました。
テスト 2(種内の多様性)
クワガタは大歯型だけではありません。3つのソフトは、大あごの小さい短歯型のオスやメスは見分けられるのでしょうか?
昆虫判定機の答え:コクワガタ
2-2. ノコギリクワガタ(メス)、上から
昆虫判定機の答え:コクワガタ(メス)
昆虫判定機はあと一歩。Google imagesとiNaturalistは海外で開発されたソフトなので日本のクワガタに対応していなくても仕方ないと思いますが、Google imagesの糞虫という回答はちょっと残念です…。
テスト 3(色彩の多様性)
色彩の多様性は昆虫の魅力の1つです。クワガタの中でも目立ってカラフルな2種をテストしてみました。
昆虫判定機の答え:ノコギリクワガタ
3-2. ニジイロクワガタ(オス)、上から
昆虫判定機の答え:カナブン
いずれも正解には至らずでした。カナブンやハナムグリとの誤答が見られ、形で判断するか色で判断するかが分かれたようです。
コンピュータにとって、よくあるポーズから外れたものは難易度が高いようです(これは、こちらの動画でも触れられています。TED2015「コンピュータが写真を理解するようになるまで」)。
クワガタを横から撮ったものや、翅を開いたクワガタを撮ったものを見せたら、どういう答えが返ってくるでしょうか?
4-1. コクワガタ(オス)、横から
昆虫判定機の答え:コクワガタ
4-2. ミヤマクワガタ(オス)、開翅
昆虫判定機の答え:ジグモ
考察
光沢のある種類、メス、飛んでいる姿は特に判定が難しいようでした。これらは原理的に判定が困難というわけではなく、教え込むためのインプットがまだ不十分なだけなのかなと思いました(上で紹介したTEDでも述べられているように、画像認識ソフトを「賢く」するためには大量のデータのインプットが必要です)。
野外で見つけた昆虫の名前が分かると愛着がわきますし、もっと知るための手掛かりにもなります。ビジネスにはなりにくい分野ではありますが、この手のソフトがさらに発展することを期待します。