クワガタはどのように人気のペットとなったのか(前半) ?>

クワガタはどのように人気のペットとなったのか(前半)

カブトムシは日本で1960年代に人気のペットとなったことを以前の記事で紹介しました。では、クワガタが人気になったのはいつごろからでしょうか。前回と同様、生き物の飼い方について解説した本を1960年代からたどることで、クワガタがどのようにペットとして人気になってきたのか調べました。紹介した本は絶版になっているものが多いですが、すべて国立国会図書館本館または国際子ども図書館の児童書研究資料室で閲覧可能です。

A stag beetle

整理のため、おおまかに以下の5つの時期に分類しました。
1. カブトムシの脇役(1970年ごろまで)
2. ペットの仲間入り(1970年ごろから)
3. 人気の昆虫としての地位を確立(1970年代半ばから)
4. オオクワガタ、大人をクワガタの世界に引き込む(1980年代半ばから)
5. 外国産クワガタムシの輸入解禁(1999年から)*今回は解説対象外

前半の投稿(このページ)では1.と2.について、後半の投稿では残りについて紹介します。

1. カブトムシの脇役(1970年ごろまで)
ペットブームが始まり、数十種類のペットの飼い方をまとめて紹介した本が増えます。しかし、このような本のなかで、カブトムシの飼い方が含まれるものは少なくないものの、クワガタの飼い方の節をたてて紹介するものが見あたりません。カブトムシの節のなかでクワガタについて少し触れているものでも、「クワガタはカブトムシの仲間である」という情報に止まっています。

たとえば、『ペットの飼い方:海水魚からチンパンジーまで』(1966)や、『ペットの捕り方飼い方馴らし方 』(1971)では、カブトムシの飼い方の説明の一部で、クワガタはカブトムシと同じコガネムシの仲間の一つであること、同じく樹液に集まる虫の一つとしてしか出てきません。

ただし、子どもたちの間ではクワガタはすでに人気の昆虫だったようです。『教材昆虫小動物飼育法 』(1971)では、「カブトムシやクワガタムシなどと同様に、こうしたカミキリムシの仲間も、非常に子どもたちの心をとらえる昆虫のようであって、」とあります。虫捕りをする子どもたちの間では早くから人気だったものの、飼育方法はまだ追いついていなかったのでしょう。

2. ペットの仲間入り(1970年ごろから)
このころから、生き物の飼い方を扱う本にクワガタの独立した節がでてきます。生態や幼虫の飼い方についてもすでに詳しく書かれています。

『甲虫の観察と飼育:カブトムシ,カミキリ,クワガタ,コガネムシ,オサムシ,テントウムシ,など甲虫類の観察と飼育法』(1972)のクワガタの節では、幼虫が朽木に生息すること、広葉樹にはいるが針葉樹にいないことなど生態についても紹介しています。飼い方については、成虫はもちろん、幼虫についても「朽木の細片をつめた容器の中で飼育します。」「一つの容器に一頭とします。」など、いまの飼い方につながる内容が含まれています。

『昆虫の飼い方II』(1975)では、カブトムシとならび、オオクワガタとコクワガタの節があります。オオクワガタの中で、ヒラタクワガタ、マダラクワガタ、ミヤマクワガタ、ノコギリクワガタにも触れています。「オオクワガタの幼虫は、一ぴきずつインスタント・コーヒーのあきビンなどで飼育するのが、管理もしやすく便利です。」「この用意したビンに、採集した朽木を八分目ぐらいつめて入れます。」とあり、その他の記述も詳しいです。オオクワガタの飼育法について触れた一般向けの本は、この本が日本発かもしれません。

3.から5.については、別の投稿で扱います。

参照:
主婦と生活社、『ペットの飼い方:海水魚からチンパンジーまで』(1966)
中川志郎、『ペットの捕り方飼い方馴し方』(1971)
松沢寛、『教材昆虫小動物飼育法 』(1971)
林長閑、『甲虫の観察と飼育:カブトムシ,カミキリ,クワガタ,コガネムシ,オサムシ,テントウムシ,など甲虫類の観察と飼育法』(1972)
森内茂・永井正身、『昆虫の飼い方II』(1975)

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